ドクターU幻語新作4【エンパワメント】

ドクターU幻語新作4【エンパワメント】

【エンパワメント】えんぱわめんと empowerment

① 権限移譲(例:Women’s Empowerment 女性の社会進出)
② 力をつける。能力強化
③ 湧活:個人や集団が自らの生活への統御感を獲得し、組織的、社会的、構造に外郭的な影響を与えるようになること。誰でも潜在的にもっているパワーや個性をふたたび生き生きと息吹かせること
④ 援助活動において、利用者やその集団などが自らの力を自覚して行動できるよう、サポートすること

さてさて今回は近年精神医療や福祉の業界でよく使われるようになったエンパワメントでございます。よく使われている割にはいろいろな意味で使われている印象です。③のように新しい漢字を当てはめている場合もあるようです。

この用語はブラジルの思想家パウロ・フレイレの提唱したもので、もともとは人種差別撤廃など市民運動などの場面で用いられた概念であります。社会的には地方自治であったり、弱者の権利獲得や地位向上などの活動の過程で生み出される信頼、自覚、自信、責任等の関係資本を育む意義があるとされます。
障がい者は自分をコントロールする力を「奪われて」いると考えられ、それを取り戻すための行動として③や④の定義に結びつきます。福祉側は主体性や人権などがおびやかされている状況下で利用者自身が自立性を取り戻し、その影響力や支配力を回復し発揮できるよう支援を行なっていくわけです。

人間はすべて生まれながらに素晴らしいパワーや美しさを持っているという考えに立ち、「自己尊重」を大切にしていきます。人が持つ内的なリソースにアクセスすることを重視します。「自立しろとか、頑張りなさい」と励ますのではなく、状況をあるがままに受容し、自己に内在する能力や特性に働きかけることになります。したがって目標は当事者自身が設定し自己決定権を尊重すると同時に自己責任も生じます。問題点の解決と行動変容の方法について当事者と支援者が常に話し合わなければいけません。従来のパターナリズム的な精神医療からするとかなり困難を感じるかもしれません。

この業界では支援すればするほど本人のパワーは失われるというパラドックスがあります。常にクリティカルパス、ミーティングなどによる評価とフィードバックが必要になってきます。ひとは常に動いています。「対話」を続けていくしかないようです。

少し硬い話になってしまいました。小話でおとしますね。

【実話】
A副院長
—-「理事長、医局長の遅刻が多くて困ります。何とかしてくださいよ」
理事長
—-「あいつもいいいところがあるんだよ。もっと褒めて伸ばさないとだめじゃないか」
O院長(心の声)
—-「この間は『褒めて伸びる人間はいない。院長ももっと職員に厳しくしなさい』といって怒られたのに。ちぇっ」