ドクターUの幻語新作11【サイコパス】さいこぱす psychopathy

ドクターUの幻語新作11【サイコパス】さいこぱす psychopathy

今回のテーマは「サイコパス」です。

「サイコパス」や「ダークトライアド」はいわゆる「心の闇」を表す用語です。実はこれらの概念は、人間の行動や社会的相互作用における理解を深める上で鍵となるものと考えます。「サイコパス」は近年書籍やネット上でも頻繁に使われるようになった用語です。ユーチューバーの方々の中にはご自分のことをサイコパスだと宣言される方がいて、「有名なあの方はサイコパス的な考えをされている」などと表現されているのを見かけたことがあります。

ネット民ではなくても一般の人でも「自分はサイコパス」と堂々と言う人もいてびっくりすることがあります。

またサイコパス診断などというのも巷にあふれているようです。私が目にした記事の中には「サイコパスは法律で定義されている精神疾患である」と断言されているものも見受けられますが、精神保健福祉法で該当しそうな文章をそのまま記載しますと「同一文化の中の平均的な人間の思考、感情、人と接する態度等のパターンからの極端な乖離が一定のパターンで根深く存在しているもので幼児期から青年期に出現し、成人期になっても持続するもので、このために自ら悩んだり、社会が悩まされたりするもの」とされています。(精神保健福祉法詳解、中央法規、P49)しかも「サイコパス」という言葉ではなく「精神病質」や「人格障害」と記載されています。医学的概念と現状で世間一般に使われている言葉の意味とは若干違っているようです。

現在流布されている「サイコパス」には「ソシオパス」や「反社会的人格障害」、「マイルドサイコパス」の人たちのこともひっくるめて使われているように見えます。また現代の状況に合わせると文化の平均から逸脱しているけれども社会的には適応しており問題を起こしてはいないひとたちもいます。さらに近年増えてきた発達障害も状態が被っていることも臨床的には経験されているところです。

恐らくは端的に言うと「サイコパス」は、感情や良心といった一般的な人間の特性を欠如しているとされる個人を指しているのでしょう。彼らは他者の感情や権利を無視し、しばしば自己中心的で冷酷な行動をとります。

また、「ダークトライアド」という用語は、サイコパス、マキャベリズム、ナルシシズムという三つの特性を結集したものです。マキャベリズムは権力への欲求や計算された行動を指し、ナルシシズムは自己愛とも呼ばれ、自己を愛し、自己を性的な対象とみなす状態を言うそうです。彼らは自己イメージが壊される事を恐れ、ゆえに彼等に対するあらゆる非難は理不尽なものであると断定する傾向があるとされます。何人かの研究者は、ダークトライアドに「第4の特性」としてサディズムを追加し、「ダークテトラッド」となることを示唆しています。ちなみにサディズムは他者に対する虐待や苦痛を与える快楽を追求する傾向を示します。

心理学的にはこれらの概念は、個人の行動や意思決定に影響を与える要因を理解する上で重要と考えられます。サイコパスやダークトライアドの特性を持つ人々は、しばしば社会的に問題のある行動をとります。彼らの行動は他者にとって害をもたらす可能性があり、組織や社会全体に深刻な影響を与えることがあります。

では、なぜ一部の人々はサイコパスやダークトライアドの特性を持つのでしょうか。

これには複数の要因が関与しています。先に述べた発達障害や薬物などの遺伝的要因やバイオロジカルな要因、そして環境要因がその一端を担っています。すなわち、過去のトラウマや社会的な経験も、これらの特性の発達に影響を与えることがあります。

しかし一方で無視できないのは、「サイコパス」や「ダークトライアド」の特性が成功や社会的利益をもたらす場合もあるという事実です。彼らの特性は、競争の激しい社会やビジネスの世界において、時にはリーダーシップや決断力として評価されることもあります。ただし、その成功はしばしば他者への影響や傷害を伴うことがあり、ネット上では炎上したり、組織の中では反感を買うなど、その倫理的な側面は常に議論の的となります。

これらの特性を持つ人々との接触や関係を持つ際の対処法も考慮されるべきでしょう。個人や組織は、彼らの特性に対処するための戦略やメカニズムを研究・開発する必要があります。これには、境界の設定、コミュニケーションの改善、そして被害を受ける人々への心理的なサポートの提供が含まれます。

「サイコパス」や「ダークトライアド」という概念は、人間の心理における闇を探求する重要なツールとなるでしょう。これらの特性は個人や社会にさまざまな影響を与える可能性があり、その理解と対処が重要です。そして、ルールや法律という立場ではなく、もっとヒューマニスティックには上位の概念である、「倫理」や「道徳」という観点に立ち、常に他者への尊重と配慮を忘れないという行動をとれるかどうかが鍵となるでしょう。

人間はAIではないのです。