ドクターUの幻語新作1 【悪夢】

ドクターUの幻語新作1 【悪夢】

ドクターUの幻語新作

【悪夢】a nightmare
① 悪い夢、不吉な夢、
② 夢であってほしい嫌な出来事

いよいよ連載が始まりました「へいあんブログ」です。編集長のドクターY本にせかされて締切寸前に重い筆をあげたドクターUことペンネーム愛田憂と申します。「精神医学用語辞典」をやろうと思いましたが他のブログで同様なことをされている方がいらっしゃったのでタイトルも変更いたしました。エッセイ風に徒然なるままゆらゆらと書いていきますのでどうかご了承ください。内容はあまり学術的ではありません。全てを鵜呑みにしないようご注意ください。

第一回目の用語は「悪夢」です。患者さんは嫌な夢について語ることがありますが、何分この夢というものは厄介なもので、患者さんからこれこれこういう夢を見たのでどういうことでしょうかなどという質問や相談もあるのですが、全く良いアドバイスができずただ傾聴しているだけのことが多いものです。恐ろしくグロテスクな内容やリアルさについついひきこまれてしまいますが、私は夢分析の専門家でもなく「凄いねー。大変だねー」としか言いようがないのです。

実際のところこの「悪夢」というものは科学的には解明されていないところが大きいと思っていましたが、さきほど米国精神医学会の診断基準最新版DSM-Vを捲ってみると「悪夢障害」というレッキとした精神疾患として載っていたのでびっくりしました。曰く小児期から青年期に多く、女性に多い(男性の2倍)、自殺企図のリスクが高い、睡眠断片化や断眠、レム睡眠を惹起させる薬で生じやすいなどのことが書かれています。また薬剤の添付文書でも「悪夢」は副作用として取り上げられておりβブロッカー、抗パーキンソン病薬、抗うつ薬などの一部では注意が必要らしいです。連続飲酒からの離脱でも反跳性に悪夢が出ることがあるらしいですね。この場合は「明晰夢」という生々しい夢を視ると何かで読んだような気がします。冠動脈疾患や癌などの身体罹患に併存することがあるとされています。

臨床現場でも悪夢を伴う疾患は多く、例えば心的外傷後ストレス症候群の方々の悪夢は診断基準になるほど有名ですが、私は経験不足で悪夢の症状を訴える方には実際にはお会いしたことはありません。彼の診断の付く方はあまり夢のお話はしないのでしょうか。災害精神医療をやっているH先生に今度聞いておきます。統合失調症の症状と悪夢が関連していることもよく伺います。統合失調症圏の患者さんは結構抵抗なく夢のお話をされる印象があります。症状が回復に向かうと夢見がよくなるそうです。
かくいう私も悪夢をよく見ます。何かの診断基準に当てはまりそうで怖いです。正夢みたいのや総天然色のムービーやドラマ仕立てのものも多いです。でも結局夢なんですよね。②の嫌な出来事、現実の方がよっぽど恐ろしいと思います。