メンタルヘルス研修会
2018年8月30日に「メンタルヘルス研修会」が行われました。
精神科だからメンタル強そう!と思った方も多いのではないでしょうか?
そんなこともないんですよ、人ですもの・・。
今回は講師を務めた、かもめクリニックの心理士伊志嶺さんに記事を書いて頂きました!
どうぞご覧くださいませ^^
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最近はニュースでも、“働き方改革”という言葉をよく耳にするようになってきていて、労働環境の改善は企業だけでなく国全体に関わる課題だと認識されるようになってきました。
精神科病院のような働く現場でも、ニュースで耳にするような過重労働やパワハラ・セクハラと行った特殊な問題だけではない、独特の問題といったことも数多く存在します。
命を預かる現場であるがゆえに緊張感は高いですし、場合によっては患者さんの死に遭遇することもあります。
苦しみを背負っている方々はいつも心穏やかにというわけにはきませんので、その方々とどう向き合い・どう支えていくのかということも大変な苦労でしょうし、24時間365日稼働している現場でありますので、自分の生活リズムを一定に保ちにくい勤務態勢といったものもあります。本当に日々の業務にご苦労されている職員の方々には頭が下がる思いです。
そういった忙しく緊張感も強い現場のなかで、どう自分のメンタルヘルスを保持・増進していくのかというのは、大切なテーマであると感じています。
ただ、世の中で言うところの働き方改革などの話は耳にするのだけれども、「実際、現場はなにか変わったの?」「今後はどう変わっていくの?」という疑問を持たれることもあるかもしれません。
もともと労働者のメンタルヘルス対策の気運の高まりは、労働者による精神科的疾患の増加や、自殺者数の増加、精神障害による労働災害請求件数・認定件数の増加といった社会的なニーズが背景にあり、国としても事業場(企業や組織)による取り組みをより一層促進させていきたいという考えがあります。
わたしたち平安病院においても、そのような現場の特性や社会的なニーズに応じて、組織としてよりよい職場環境を目指して様々な取り組みをはじめています。
具体的な国からの取り組み指針(『労働者の心の健康の保持増進のための指針』)についてはインターネットも含め様々なところで目にすることができるので割愛しますが、今回のメンタルヘルス研修も、その取り組みの一環として行われています。
国の指針というとなにか小難しい話や表現といったイメージが先行しやすいとは思いますが、まず基本として、わたしたちは職場からどのような配慮やサポートが得られるはずなのかということを知っておくことは大切なことだと感じています。社会生活のなかでも、様々なサービスが用意されていると思いますが、そのサービスがあるということだけでなく、それを必要としている人がいかに上手に用いていくかということが、自分の身を守ることにもなりますし、働く上での安心感や自己効力感(≒やれる感)につながっていくと考えています。
なので、今回お伝えしたポイントとしては、
- 当院でメンタルヘルスケアへの取り組みが組織として推進されていること
そのなかで、
- 上司は部下のメンタルヘルスにいつも気を留めていけるような態度が求められていること
- 相談すればいつでも応じられること
- 場合によっては産業保健スタッフが問題解決にむけて助言や職場内でのコーディネートをしてもらえるということ
があげられます。
さらに、問題があれば職場として環境改善の努力が様々な関係スタッフの連携のもと試みられますし、仮にメンタルヘルス不全となって休職した場合も、よりよい復帰ができるような配慮や協力が得られることなどがあげられます。
働く中で辛さやしんどさを抱えていたとしても自分の思い込みや推測だけであきらめることがないよう、本来得られるべきサポートがあることを知り、それらを上手に使っていくことが大切ではないかと考えています。
その一方、メンタルヘルスをケアしていく上で、問題をいかに改善していくかという視点だけでなく、どううまくつきあっていくか・活かしていくかという視点も大切になっていきます。
当然、仕事をする上では、頭や体を使うのでエネルギーを使いますし、緊張やプレッシャーのなか働かなければならなかったり、一緒にはたらく職員との関係に悩んだりすることも生じてくるでしょう。もちろん、ストレスというものは避けられるのであれば避けたいものではありますが、組織で働く以上、何かしらの成果や生産物がもとめられてくるものですので、利害がからんでくると、患者さんとの関係のなかでも、または一緒に働く職員との関係のなかでも、葛藤や軋轢は生じてくるものです。なので、いつも物事がうまく進みながら働けるというわけにはいきません。
そういったストレスって避けたいものですよね。でも、実はストレスってわたしたちに害を及ぼすだけのものではなく、わたしたちに変化をもたらしてくれるものでもあるのです。
興味深い研究のひとつに、スタンフォード大学の生物心理学者であるカレン・パーカーによる実験があります。
パーカーは、幼児期のストレスがもたらす影響について、リスザルをつかった実験を行ったそうです。その実験では、子ザルにストレスを与えるため、子ザルを母親から引き離して、1日1時間、ひとりでケージに入れたそうです。当初、幼児期のストレスは情緒不安定につながるだろうと予測していたようですが、幼児期にストレスを経験した子ザルたちは、成長するにつれ、過保護に育てられた子ザルたちに比べ、物怖じしない性格になったそうです。つまり、ストレスを経験した子ザルたちは通常とは異なる発達のしかたを見せ、強い好奇心とレジリエンスが備わったそうです。
こういったことは決してめずらしい話ではなく、いわゆる脳がストレスに適応しようとする自然な働きらしいのです。そのため、もしあるストレスに遭遇した際、もしくはストレスの渦中にある場合、私たちの体や脳はストレスな事態にどう適応したらいいのかということを一生懸命とりくんでいるのであり、学び・成長していこう、困難に対処していこう、仲間とのつながりを強めていこうと、とメッセージを投げかけてくれているのです。なので、たしかにストレスを通して心や体の健康を害してしまう場合もあるのですが、うまく用いてあげることで、乗り越えられる自分へ変化していけるのです。
そこで大事になってくるのが、「自分の受け止め方」であり「ストレスをとおして作り上げる自らのストーリー」となります。たしかに辛いものだし、避けられるのであれば避けたいものではあるが、困難の中で自分を助けてくれる存在を発見することで『自分は大切にされる存在なのだ』という実感をつくることができるかもしれませんし、困難の中を生き抜く体験を通して自分への信頼や人生の意味を見出すのかもしれないし、困難があることで小さなことへの感謝もうまれてくるかもしれません。つまり、ストレスの中でいかにプラスの側面をみつけられるのかが大切ではないかと考えています。
もちろん、ストレスをただプラスに受けとめておけばいいというわけではありません。体にとっていいことは心にとってもいいことなので、そういったことは積極的にやったほうがいいでしょうし、休息をとおしてコンディションを整えていくことも大事なことです。ただ、不平不満や辛さ、働くことへの不安や恐れといったことで心が満ち溢れているよりも、視点を変え、行動を変えていくことで、こころの安寧や建設的な行動の良循環につながっていくものなのです。そういう意味で、まずは働く人々がいま目の前の職場環境や労働をとおして、『今、自分は職場環境を働くことをどう捉えているのか?』『これからどういった心構えをもってこきたいのか』ということを、ちょっと立ち止まって考えてみることは、メンタルヘルスの第一歩なのではないかと思います。
これからも、平安病院が、活き活きと笑顔とやりがいをもちつづけられる職場であるといいなと思いますし、そういった意味をあたえられ続けられるような職場であるといいなと思います。
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以上、がお話でした。
仕事をしていくと色々な人たちとやりとりがあるので少なからずストレスに感じる部分ってありますよね。私も権力ある人と話す時はドキドキです(笑)
最近はストレスチェックの義務化があるためスタッフはストレスチェックを受けます。
私も受けましたが・・なんと95点中72点と高得点!
受けた時はなんともなかったけども今は少し負担に思う事が出てきているので、そこをマネジメントしていく必要があるんですねーー!
今回もいい勉強になりました。